朝、というキーワードにマッチしそうな写真をいくつか提示する。写っているのはどれも夕陽。白黒写真ではそれはわからない。すると返事が届く。
「ペール・ギュントの朝はモロッコの朝だから、なんとなくアフリカっぽい感じで伊豆半島の山の上の写真なんか素敵」
第三者にはまるで宇宙人の会話に思えるかもしれないが、今度は地質学的な目的で神奈川県三浦半島の岩壁を撮った写真を提示する。
「地層もいいね。ノルウェーのフィヨルドを思わせる」
今度は他所で出展した神奈川県平塚海岸の海と砂丘の写真を提示する。
「砂丘はペール・ギュントのエジプトの話に出てくるし、海は航海に出てくるから、関係なくもない」
思いのほか連想ゲームが楽しい。先方はノルウェー音楽留学経験のあるホルン奏者の旧友女性で、これはピアノとホルンの演奏会とのコラボ展に向けたやりとり。オファーを受けて僕が目を留めたのは開催場所のピアノサロンの運営方針で、展示作家にとってそれはレンタルギャラリーよりもコマーシャルギャラリーに近い気がする。さすがに作家契約の概念はないけれど。テーマをまずお伝えし、出展料はかからず、作品価格を設定するらしい。実現可能性はともかくKings of Convenience以外のノルウェーにも親しむことができる機会を楽しみにしている。
*グリーグのペール・ギュントは六年前のクリスマスにもノルウェー繋がりという同じピアニストとホルニストの演奏と朗読を聴いている。
展覧会のご案内ありがとうございました、とペンで手書きした返信メッセージが添えられていた。伝統的プロセスを用いる白黒写真作家に特化した都内のコマーシャルギャラリーのオーナーさんから自宅にフライヤーが届いていた。知る人ぞ知るギャラリーなのでソーシャルアカウントは存在しない。一階フロアのガレージを改装したそのギャラリーは、飲み物とお菓子が出されるユニークでアットホームなところなのだ。
Photo 1: Izu peninsula, Shizuoka. Photo 2: Neighborhood.