Column: Traditional Japanese paper Awagami

Traditional Japanese color Hanada-Iro. 日本の伝統色「深縹(こきはなだ)」と藍染めされた「保多織」

その手触りの良さと縹色に藍染めされた名刺入れを一目見て、その場で購入したのが2017年だった。その年、約30年ぶりに高松で再会した父方の親類のひとりのケイコ姉さんは昔と同じように栗林公園を案内してくれた。その敷地内の「かがわ物産館・栗林庵」で僕は初めて高松の伝統工芸「保多織」を知った。江戸時代から伝統を引き継ぐ織り元は、香川県高松市内に一軒しか現存していないらしい。幼少の頃に毎年顔を合わせていた歳の近い高松の従兄の母親は徳島県出身で、建設中だった大鳴門橋と渦潮を僕は幼少の頃に写真に写している(in Setouchi)。その徳島県の伝統工芸と言えば吉野川水系の阿波藍と現在専業一社の阿波和紙。

 

SAKURA (2022) | Printed on Murakumo Kozo Select White by Awagami Factory

「この紙を好きになった」とまるで恋に落ちたかのようにアワガミファクトリーの和紙を紹介していたのは社会学の博士号を取得しているドイツのビジュアル・アーティストSandra Köstlerさんだった。CVのとおりサンドラさんは台湾での展示実績などから東アジアの文化に興味を持っているようで、そのポートフォリオには台湾のソーシャル・ランドスケープの他、韓国の山水画に関するリサーチベースのランドスケープ「SANSU」などがある。ヨーロッパがロックダウンされていた期間には、元WIRED編集長・若林恵氏の書籍『さよなら未来』に登場しそうなアーカイブを利用したリサーチを行なっていた。世界各国で日々膨大に撮られるストリート写真のアーカイブからフェイスマスクを装着している人物が写り込んでいるものだけを抽出し、それらをヨーロッパや東アジアなどの各地域毎に分類してグラフのように積み上げていく様子を動画化。フェイスマスクの装着率をビジュアル化する「A CONSTANT STREAM OF MASKS」という試みだった。そして直近のギャラリー展示では、サイエンス・ライターEmma Marris著『自然という幻想』を彷彿とさせるような(手つかずの自然はもはや地球上に存在しない。地球環境の変動によって動植物は大移動している。外来種を排除するのではなく人間が積極的に自然を管理することで共存の道を探るべきだという論文)テーマを表現するために南ドイツの自然保護区で撮影した自然を日本のサテン生地に印刷、それらを天井から吊るして人為的な自然界を表現するインスタレーションを行なっていたようだった(THERE IS NO SUCH THING AS NATURE)。

 

SANDS (2022) | Printed on Murakumo Kozo Select White by Awagami Factory

和紙の産地は日本国内多々ある中で、「鳥の子」など北陸の越前和紙が最も知られているかもしれない。そんな中、徳島県や四国に縁がある僕は阿波和紙を早速オーダーしてサンドラさんに報告した。「あなたの投稿を参考にして、これらの写真を阿波和紙にプリントすることに決めました」、「それは良い判断!この紙は本当にイイ!」。

和紙の面質は作品を選ぶけれど(なぜ和紙を使うのか、どの産地や工房の和紙を使うのか、その意図やアウトプットを想定した作品作りが理想と思うけれど)、楮を原料とする比較的薄めの「群雲・楮」などは伝統的な和紙工芸のように裏側から光を透過させる演出にも向くと思った。そして、和紙にプリントしたものを手にするとそれ自体を大切にしたくなる。いずれはアワガミファクトリーのプリントラボ/プリンターさんにいくつか印刷依頼させて頂ければと思いつつ、あるいは超短編シリーズとして和紙でzineを製本化なども試みてみたいと思う。

▶︎ Awagami Visiting Artist Program (Japanese / English)

 

Column: Incandescent zine

One of my favorite zine ‘Incandescent’. It is curated and produced in Portland, Oregon by Pine Island Press. I made some videos of Incandescent (Issue 7, 10, 12, 16, and 17). Check out my YouTube playlist or Vimeo showcase. Thank you for the permission, founder Helen Jones. I hope Incandescent continues.

昨年掲載されたアメリカ・ポートランドのIncandescent zine。休刊と一年後の再開に向けたアナウンスを読んで、創始者Helenさんから許諾を得て、これまでに刊行されたものの中から手元の5冊を動画化、アーカイブを作ってみました。

 

2011年、マサチューセッツ芸術大学出身のHelen Jonesさん等がアメリカ・ポートランドでインディペンデント・パブリッシャーPine Island Pressを創設。年二回刊行されるPhotography zine Incandescentは、掲載作品の他にも毎号招聘される序文のライターやアメリカらしいタイポグラフィ、パイナップルの形をした島のロゴも愛着ポイントで、サブミッション・フィーを取らずスポンサー広告収入も得ず、時にはブックフェアに出展しながら、あくまでもzineの売上を次号の制作費に充当する運営スタンスを貫かれていました。10年間で約50ヵ国350名を掲載、日本人掲載者は3名で、そのうち1名はギャラリー契約作家だったと思います。

▶︎ Incandescent will be taking a hiatus,

10年間で印刷コストは倍になりましたという箇所から、パブリッシャーの立場ではないのですが、書籍化におけるサステイナビリティ(持続可能性)をアメリカの助成金以外で自分も少し勘案してみたい感じがします。YouTubeVimeoに置いた動画は、ワールドワイドに開かれている文化のひとつをシェア出来たらという思いとソールド・アウトになった場合は入手出来ないので、そのためのアーカイブのつもりです。オムニバス形式の冊子ですが、一度ブックショップのオーナー様などもチェックして頂けたらと心の内で願いつつ。*発行部数は毎号約200〜250部。初期のものはソールド・アウト、Issue 10+12はalmost sold out!とのことです。

pineislandpress.com
incandescentzine.wordpress.com

 

▼ 掲載者一部紹介 | Representative contributors
Issue 7: オランダ | In a clearing | のかつての創始者のひとりJordi Huisman、他。 Issue 10: スペインのJM Ramírez-Suassi写真集「One Eyed Ulysses」刊行前に掲載、他。Issue 12: シカゴのフォトジャーナリストJ.Daniel Hud、ドイツ出身の写真家兼デザイナーJens Windolf、他。Issue 16: NYのGoldenrod Editions創始者Roslyn JuliaIn Conversation Withの創始者でロンドン芸術大学出身のドキュメンタリー・フォトグラファーMichaela Nagyidaiová、他。Issue 17: Anywhere Blvdの創始者・南カリフォルニアのRhombie Sandoval、僕の「LITE」から一枚など。敬称略

 

at Yamanote Photographic

My photography prints + Wood frame sample at Yamanote Photographic. Yamanote Photographic is an ILFORD certified print lab in Japan. I got some advice about inkjet print from printing director.

中判カラー・ネガフィルム現像でお世話になっているプロラボ・写真弘社と同じ建物内、東京・東神田のプリントラボ・山ノ手写真製作所に事前にアポイントメントをとった上でお伺いして、額装やブックマットに関する色々なアドバイスを頂きました。

昨年からのコロナ禍と、暗室などが営業自粛されていた状況もあって、今年2月に裁断機とA3+インクジェット・プリンターを自宅に導入しました。インクジェット・プリントはカラーよりも白黒の方が圧倒的に難しいと感じている中、暗室で手焼きしたプリントと見比べながら試行錯誤を繰り返しています。今回、山ノ手写真製作所でカラーと白黒のプリントのチェックもして頂けたのは本当に良い体験となりました。

*プリント制作やプリント販売に関するコラムをつづきに書きました。

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Column: Goldenrod group zine

「zineというものを知っている?」

13年前の2008年、印刷出版大手に勤務する友人からそう聞かれたとき、身の回りではまだ聞き慣れないものだったと思います。当時その友人と都心をぶらつき、僕は林央子 (Nakako Hayashi) さんによる「here and there」というzineをブックショップで手に取りました。ホンマタカシさんなどが参加されていて、しかしそれは写真に特化したものではなく様々な記事が収められているアート誌、グラフィックデザイナーによる先鋭的な試みなども形にしているインディあるいはzineならではの刊行物でした。

 

当時もうひとつ「All things ordinary」という写真に特化したアメリカL.Aのグループzineを購入。そのキュレーション傾向は、一見すると当時世界的流行でもあったガーリーカルチャーに沿っているように見えて、掲載アーティストのクレジットにはBryan Schutmaatの名もありました。グループzineの役目は、キュレーションした作家作品をグローバルに紹介すること。レイアウトはオーソドックスに作品掲載のみに注力されています。そうした媒体の楽しいところは、知る人ぞ知る作家がこんなところに!と発見できたり、この作品良いなと作家名を調べてみると、実はその世界では著名な人だったなど、まるで辞書や図録のように知見を得るきっかけになることかもしれません。それらzineの特徴は広告収入を得ておらず、商業目的ではないところです。

グループzine、後者の主にアメリカの「文化」にコミットメントできたらと夢のひとつを持っていました。昨年それが叶って掲載されたポートランドのIncandescent issue 17、そしてニューヨークのGoldenrod issue 01も海を渡って無事に先日届いて、後者は100部のうち現時点で残り11部とアナウンスもありました。その動画化と公開の許可を得られましたのでご覧頂ければ幸いです。RoslynGraceに感謝。

▶︎ Goldenrod group zine Issue 01: Online shop

(Movie via my Vimeo / Copyright ©︎ by the artists and Goldenrod Editions)

 

Column: HIDDEN HISTORIES exhibition by ICW

今年、In Conversation Withが立ち上がった直後、全世界はコロナウィルスによるパンデミックに突入し、欧米の街は軒並みロックダウンされました。屋外で活動出来ない閉塞感の中、すぐに全世界の写真家達とビデオ会議を始めて、各国の写真家達のポートフォリオや対談の様子をオンラインでシェアし始めたのがICWの創始者Michaela NagyidaiováKristina Sergeevaでした。ICWの名称は、コロナ禍を迎えて新たな意味を持ち始めたように僕には感じられました。

ICW創始者二名が個々に制作しているドキュメンタリー・フォトシリーズ、そこに内包されている要素をワードとして抽出し、それを公募のテーマにして、世界中の写真家達とコラボレーションを始めたところにも僕はすぐに興味を持ちました。その特定ワードに基づく様々な見解や新たに知り得た各国の歴史などを共有、学びの場にしているところがユニークで、まるで美大の通信教育部のような面白い試みにも僕には思えました。それを彼女達は「ビジュアル・ディスカッション」と呼んでいます。

 

ICWの公募は、Family Spaces、Getting By、今回のHidden Historiesで三回目。バーチャル・リアリティを用いた展示は初の試みです。ロックダウンされていた欧米各国の状況とコロナ対策、世界中の写真家達との国境を越えたコラボレーション、新たな体験や鑑賞方法など、バーチャル・リアリティを用いた経緯はその他にも、VRプラットフォームやアプリ、デバイス面も整った現在の時代的背景もあるかもしれません。もしもこの展示が現実空間で行なわれていたら、相当に大きなギャラリースペースが必要となるので、それはまるで言葉のあやのように現実的ではないかもしれません。今回は9つの国から15名の写真家達が参加した展示となりました。僕にとっては日本にかつて存在した国境のひとつBorderlandシリーズで、ボーダーレスな企画に参加出来たことを心から感謝したいと思います。アイデアを次々と形にしていくICWの五年後、十年後が楽しみです。

 

今回の展示が以下のサイトで取り上げられたようです。In Conversation With創始者二名の母校、ロンドン芸術大学のPost-Grad Communityと、美大生や卒業生の新進気鋭アーティストを紹介するプラットフォームThe Pupil Sphere。今回のオンライン展示HIDDEN HISTORIESのことが語られています。一読してみてください。

▶︎ ual | Post-Grad Community
▶︎ The Pupil Sphere

 

Column: Covid Pictures

コロナウィルスによるパンデミック、欧米各国がロックダウンされて以降、イタリアのある写真家はケミカルを取り寄せてC-41カラーネガの自家現像を始めた。C-41の自家現像なんてすごいね!とメッセージを送ったら、前からやってるんだけど今は家から出られないから丁度良いと思って、と返答があった。2008年頃に自分もC-41自家現像をしていたので、ISO感度に関係なく高温処理で3分15秒というのを思い出して懐かしくなった。アメリカ・ニューヨークのネイチャーを愛する女性写真家は、家の窓から見える景色をスマートフォンで録画してインスタグラムのストーリーに動画投稿していた。美しい風景、安全に過ごして、とメッセージを送ったら即返答があり、直後に静止画をフィードに投稿していた。しばらくこんな投稿が続くかも?と書き添えてあった。ロックダウン中の不可抗力な状況下でも今しか出来ないことを彼らは共有していると思った。

 

Aint-Bad Magazineのエディタだったアメリカ・オレゴン州のJennifer Timmer Trailさんが、パンデミック下の世界中の写真をアーカイブしようというプロジェクト、Covid Picturesを創設された。その主旨を尋ねるとジェニファーさんはこのように答えてくれた。「私は9.11アメリカ同時多発テロ発生時にニューヨークにいました。あのとき、あらゆる写真を収集している機関があったことを思い出したのです。そして私は3.11の東日本大震災もよく覚えています。日本の友人の葬儀に行きたかったのだけれど行くことが出来なかったの!」。

アーカイブとは何か、ということを僕はもう一度考えた。それはずっと先の将来で役立つものかもしれない。ニュース報道のために報道機関がアーカイブを利用したり、将来、学者や研究者がリサーチに用いるために国や人種などある特定条件でアーカイブから写真(データ)を抽出したり、あるいは人類が経験した困難とそのときの各国の状況についてキュレーターやエディタが出版物制作のために優れた作品をアーカイブから抽出することなどが考えられるかもしれない。アーカイブ制作に参加協力することは社会貢献でもあるように思った。特にコロナウィルスによるパンデミックは世界で起きていることで日本固有の問題ではない。日本の写真をCovid Picturesにサブミットしてアーカイブしておいて頂き、後年、世界各国から収集されたそのアーカイブ・データを客観的に見られることを自分は願おうと思います。そう出来るときには、この世界的危機が収束しているはずという希望。

2020年3月末、桜が咲く中で珍しく雪が降った日、年齢は違えど自分と同じ誕生日の志村けんさんがコロナウィルスによって他界された | Spring snow (Mar.29.2020) from the series “Wintertag” | Covid Pictures Archive 1-250