In Conversation Withが創設されて間もなく、全世界はコロナウィルスによるパンデミックに突入し、欧米の街は軒並みロックダウンされました。その直後、全世界の写真家達とビデオ会議を始めて、各国の写真家達との対談やポートフォリオをオンラインでシェアし始めたのがICWの創始者Michaela NagyidaiováとKristina Sergeevaでした。ICWの名称は(In conversation with 〜との対談)、コロナ禍の制約の中、オンラインの活用でより柔軟な発想を持ち合わせたように僕には感じられました。
ICW創始者二名が個々に制作しているドキュメンタリー・シリーズ、そこに内包されている要素をワードとして抽出し、それを公募のテーマにして、世界中の写真家達とコラボレーションを始めたところにも僕はすぐに興味を持ちました。その特定ワードに基づく様々な見解や新たに知り得た各国の歴史などを共有、学びの場にしているところがユニークで、まるで美大の通信教育部のような面白い試みにも思えました。それを彼女達は「ビジュアル・ディスカッション」と呼んでいます。
ICWの公募は、Family Spaces、Getting By、そしてHidden Historiesで三回目。今回は9つの国から15名の写真家達が参加した展示となりました。バーチャル・リアリティを用いた展示は初の試みです。ロックダウンされていた欧米各国の状況とコロナ対策、世界中の写真家達との国境を越えたコラボレーション、新たな体験や鑑賞方法など、バーチャル・リアリティを用いた経緯はその他にも、VRプラットフォームやアプリ、デバイス面も整った現在の時代的背景もあるかもしれません。もしもこの展示が現実空間で行なわれていたら、相当に大きなギャラリースペースが必要になるので、それはまるで言葉のあやのように現実的ではないかもしれません。僕にとっては日本にかつて存在した国境のひとつBorderlandシリーズで、ボーダーレスな企画に参加出来たことを心から感謝したいと思います。アイデアを次々と形にしていくICWの五年後、十年後が楽しみです。
ICW創始者の言葉が以下のサイトでも紹介されたようです。彼女達の母校、ロンドン芸術大学のPost-Grad Communityと、美大生や卒業生の新進気鋭アーティストを紹介するプラットフォームThe Pupil Sphere。今回のオンライン展示「Hidden Histories」のことが語られています。
▶︎ ual | Post-Grad Community
▶︎ The Pupil Sphere