「zineというものを知っている?」。13年前の2008年、印刷出版大手に勤務する友人からそう聞かれたとき、「ジン」という言葉はまだ身の回りでは聞き慣れないものだったように思います。当時その友人と都心をぶらつき、僕は林央子さんによる『here and there』という本をブックショップで手に取りました。ホンマタカシさんなどが参加されていて、それは写真に特化したものではなく様々な記事が収められているアート誌、グラフィックデザイナーによる先鋭的な試みなども形にしているインディあるいはzineならではの刊行物でした。
*Video: Goldenrod Editions (New York) first group zine issue 01
当時もうひとつ、写真に特化した『All things ordinary』というアメリカL.Aのグループzineを購入。それは当時、世界的流行でもあったガーリーカルチャーに沿ったキュレーション傾向でしたが、表紙写真と掲載アーティストのクレジットにはBryan Schutmaatの名もありました。
グループとは、チームやメイトとは少し違って、コンセプトを基に選りすぐる枠。欧米各国のグループzineは、毎号世界中から作品を公募して、その都度選考した作家作品を紹介するもの。日本のグループのようにいつも同じ顔ぶれということはありません。グループzineの楽しいところは、ページを捲りながらこの作品良いなと新たな作家を知るきっかけになったり、知る人ぞ知る作家がここに!と発見できたりすることです。きっと、常に新しいアーティストを探しているキュレーターやエディタなども購買層に含まれているのではないかなと想像します。いずれにせよ、アメリカ発祥のzineというメディアの特徴は、雑誌のように広告収入を得ておらず、商業目的ではないところで、そうしたインディの文化を支えているもののひとつは、日本にはない国からの助成金かもしれません。
ちなみに、海外のあるイラストレーターが、大きな「Magazine」、中くらいの「zine」、小さな「ne」とユーモラスにイラスト化していたのがちょっと面白かったです。