Der Sonnenstich by Katinka Bock

Der Sonnenstich by Katinka Bock. Roma Publications, 2023

フォーム(形、形態、Form)を示唆しているのかなと想像しながらページを捲って、これは家に置いておこうと購入したのは、ドイツの彫刻家カティンカ・ボックの写真集。白黒写真主体の写真集はミニマリズムの画家エルズワース・ケリーなど、写真家ではないアーティストのものしか今の僕は所有していない。

ここ数年、メニエール病が再発さえしなければ、Post ClassicalとかNu-Jazzあたりの音楽を聴いているのだけれど、ポーランドのピアニストHania Raniの、まるでアートブックのような楽譜(Esja / Home)を知ったとき、書棚に飾ったり、観賞用の本としてコレクションしたいと思った。この写真集の購入動機もほぼ同じだった。以前、スウェーデンの出版社エディタが、私は薄くて美しい本が好きだ、と仰っていた。ハードカバーでボリュームのないものをうまく想像出来なかったけれど、美しさとは詰め込むことよりも省くことかもしれない。この写真集の装丁には作家名とタイトルしかなく、下地とほぼ同色のデボス(凹)加工となっている。光の加減によってはその文字は消失し、白いテーブルにこの本を置くと、薄くて平らなプライウッドのように見える。美術館の白い部屋に積み重ねられていたら、遠目には本とは気づかず彫刻と見紛うかもしれない。そんな佇まいに、不思議と親しみやすさすら覚える。極めてシンプルな美しさを持つハードカバーの本には初めて巡りあったような気もする。

Photographを日本語訳すると、写真ではなく光画であると何かの本で読んだ気がする。この本のドイツ語タイトル『Der Sonnenstich』は「日射病」らしい。「Sonne」と「stich」で「太陽の棘」。購入したショップとは異なるけれど、この本の刊行の経緯と内容は金沢IACKのサイトで解説されている。