
初期浮世絵展 版の力・筆の力
千葉市美術館 2016
An Exhibition of Early Ukiyo-e: Power of the Woodblock, Power of the Brush
Chiba City Museum of Art 2016
図録コレクションから第三弾
平安貴族の女性は黒髪ロングのストレート。江戸時代の美人画の女性はかんざしを挿して髪をアップに結い上げている。西から東へ、鎌倉時代からの流れかと思いきや、日本髪と呼ばれる江戸のヘアスタイルは歌舞伎で言うところの女形スターの容姿を女性が模したのが発端、つまり男装らしい。江戸の大衆文化はわりとジェンダー・ニュートラルだったのかもしれないし、社会学的に浮世絵を鑑賞するのも面白いかもしれない。
2016年の『初期浮世絵展』は日本大学芸術学部美術学科出身の女性が案内してくれたもので、事前に菱川師宣記念館に立ち寄っていたことが伏線となった。前知識を有していなかった自分の方が夢中になってしまった。その感動は書ききれないし、ここでは知ったかぶりで絵師の名を列挙するのはやめよう。屏風画にも、絵巻にも圧倒された。実物はすごい。描かれている物語のスケール、ものとしてのディテール。和本にも見入ってしまった。そんな中、1741年頃に遠近法を試みて、遠近感が一部おかしくなった奥村政信の「両国橋夕涼見大浮絵」を始めとする三点には、このような涙ぐましい努力があって新時代が開かれるのだ、と泣きたいくらい感動したのを覚えている。心残りは、紙に着目するのを忘れたこと。和紙であることに違いはないだろうけれど、きっと和紙だから残るのだ。

Left: 奥村政信と西村重長 Right: 菱川師宣
この図録は実に301頁、図版195点、1430g。タイポグラフィが美しい。
図録制作: 美術出版社デザインセンター
参考文献: 『春画のからくり』田中優子、『江戸へようこそ』杉浦日向子、『和本入門』橋口侯之介