Research: Local spring water ♯03

At this site, clear water emerges from the gravel layer. This spring is a vital habitat for black-winged damselflies, located just a short distance from my house. It remains a restricted area, opened only once a year for the caretakers of the ‘Water Deity’ (Fudo-son / Acala). While wasabi was once farmed downstream, what strikes me most is how this place differs from other local springs—it is a bright, beautiful landscape that I perceive as a unique geological singularity.

Side A
いよいよ地元の羽黒蜻蛉が生まれる湧き水遺跡に足を踏み入れた。昨年まで僕はその場所の存在すら知らず、複数の地主さんから教えられた。「そこは立入禁止。年に一度、不動尊清掃で自治会役員のみが敷地内の立入を許可される」。不動尊清掃の当日、地権者を含む関係者が列になってその敷地に入った。倒木の奥に広がる空間にはかつてのワサビ田の面影が残り、所々で鮮やかな緑色のワサビの葉を目にした。足元にゴツゴツとした石が連なる上り勾配の沢を踏みしめていくと上流から比較的流量の多い水が流れてくる。辿り着いた先は高台で、目の前は垂直に切り立った絶壁だった。水の湧き出る流出口は地層に沿って横一文字。天保12年と台座に刻印のある不動尊が祀られていた(1841年/江戸時代)。「こんなにはっきりと地層の境がわかるなんて。しかもこの水量!」と自分は興奮してしまった。他の湧き水遺跡と比べて明るく美しい景観、人知れず代々大切にされてきた場所に納得した。一方で、自治会連合会元会長の言葉にも考えさせられた。段丘崖はハザードマップのエリア内なので、段丘面(崖上)の宅地化の際、移住者から行政に土地整備の要望が出されることも少なくないらしい。

 

As terrace cliffs are designated as high-risk areas on hazard maps, tensions occasionally arise between those advocating for residential development and those seeking environmental preservation—or, more fundamentally, between anthropocentrism and non-anthropocentrism. From a hydrological perspective, the continued flow of groundwater serves as evidence of a healthy water cycle. While the traditional Japanese belief that deities reside in all things is fading in modern society, there is a profound need to reconsider the wisdom of our ancestors—why they enshrined deities and Fudo-son (Acala) in these specific locations—as we look toward the future.

Side B
「どうでした?」とその日の夕方に電話があった。同じ低層マンションに住むかつての自治会長からだった。「いやもう…」と僕は間を置いて、語彙力のなさを無言で補うことにした。「…最高でした」。あははと笑った元自治会長が教えてくれたのは不動尊の祟りのエピソードだった。ある年の自治会長は湧水や神仏にご関心がなかったのか、不動尊清掃を実施しなかったらしい。不動尊は右手に持つ剣で迷いを断ち切り、背負う火炎で煩悩を焼き払うと言われている。するとその会長はご病気を患い他界され、同様に不動尊清掃を実施しなかった翌年の会長も他界されたらしい。二年続いた不幸の後、役員による不動尊清掃を再開してからはそのような事象は起きていないのだという。宅地開発派と自然環境保護派、あるいは人間中心主義と非人間中心主義の間では時に折り合えないこともあるのかもしれない。そんな中、なぜそこに神や不動尊が祀られているのか未来を見据えて見つめ直す必要はあるかもしれないし(水文学の観点では地下水が枯渇していない地域は水循環が健全であることのエヴィデンス)、自分の目には知る人ぞ知るこの不動尊があるからこの地に住んでいる、この先そう心に留めておける大発見で、仮にも将来、土地整備が計画されることがあっても、ここは稀に見る地質学的特異点であると映った。

*参考文献:『地下水は語る − 見えない資源の危機』守田優

 

不動尊の背後は礫層、緑や赤などカラフルな水生植物が生息していた。
#Hydrology #Animism
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