This is a reduced-scale floor plan of the gallery.
Do you know where this place is? It’s not in Japan. This is Russia.
縮小して転載したのは見取図。一口サイズにカットされたバウムクーヘンみたいにそのギャラリーは四分円(円の1/4)の形をしている。レンガのようなブロックが積まれた白い壁、西洋ふうの縦長の窓からは自然光が入る。建物は交差点の角にあり、道路の中央には路面電車の線路が敷設されている。ギャラリーから頂いたのは今秋に二週間の個展というオファー。この場所はヨーロッパロシアの最東端に近いロシア中西部スヴェルドロフスク州(ウラル)。10年近く前、ここでは神奈川拠点のストリート写真家ノグチシンさんの個展が開催されている。ロシアと言えば、シベリアを想定したようなマーセル・セローのディストピア小説『極北』が素晴らしく(村上春樹訳)、単行本から文庫本に買い直して時々読み返している。この機会にロシアの写真家について触れてみようと思う。
L: LESS THAN ONE by Alexander Gronsky (Tycoon Books)
R: The Bliss Of Girlhood by Kristina Rozhkova (SERCHIA Gallery)
まずはエストニア出身の現代風景写真家Alexander Gronsky。2014年、東京東雲にあったYuka Tsuruno Galleryでその展示を鑑賞した際、緑の自然の背後に原子力発電所の煙突が聳えるロシアの風景を見て、境界線が表現されていること、全紙以上に引き伸ばされた中判または大判と思しきフィルムフォーマットの解像感にも当時は感銘を受けた。僕はその年の初頭から「Wintertag」を始めているのでロシアの雪景色にも影響を受けたと思う。約10年後の現在、新進気鋭のロシアの写真家と言えば90年代生まれのKristina Rozhkovaさん。前述のロシアのギャラリーからほど近いペルミのご出身らしい。二年前、イギリス・ブリストルのSERCHIA Galleryが先陣を切って「The Bliss Of Girlhood」を展示。今年は東京神楽坂のSHABA(写場)でも展示された。Kristinaさんをそこで知った人が運良く彼女のインスタグラムを見られたら、あまりに対照的なぶっ飛び具合に一瞬言葉を呑むかもしれないし、グロテスクな狂気に感じられて目を背けたくなるかもしれない。しかしそれはカラーでは生々しく、白黒では和らいで感じられるだけかもしれない。いずれもKristinaさんが大学で哲学を学んだことと関連しているらしい。そのアカウントが非公開の理由は、BANの回避とジェンダーに関するロシアの検閲も回避するためだと思う。日本のメディアのBRUTUS「流行写真通信 第17回」のインタビューで心の内が語られている。