Collection: Art exhibition catalogue ♯4

『ジョセフ・アルバースの授業 色と素材の実験室』
DIC川村記念美術館 2023
“Josef Albers: Pedagogical Experiments”
Kawamura Memorial DIC Museum of Art 2023

図録コレクションから第四弾

展覧会のタイトルどおり、入場者が参加できるワークショップがあった。バウハウスやブラックマウンテン・カレッジの美術教師だったジョセフ・アルバースの教えのように、一枚の紙を折って何らかの形を作り出し、紙は折ることで強度も得られることを知る。あるいは複数の色紙を重ね合わせて色の相互作用を体験する。一方で、画家でデザイナーでもあったジョセフ・アルバースの「正方形讃歌」シリーズを展示ブースで見たときには、あくまで僕は配色実験の要素よりも、近づけばなぜかその筆跡にアンドリュー・ワイエスの絵から感じる静謐さと似たようなものを感じたり、引きで見るとその大きさも相まって一際美しいミニマリズムの抽象画に思えた。などと、感想を述べることさえおこがましく感じるけれど、DIC川村記念美術館が閉館する前に素晴らしい展覧会を見られたことは幸せだった。図録には様々なバウハウス関連書籍を補完するようなテキストと図版が満載されている。352頁、発行: 水声社

 

『一般教育と美術教育 所有的か生産的か』ジョセフ・アルバース/『ジョセフ・アルバースの授業』より

ここで、いわゆる進歩主義教育のもたらしたお粗末な遺産について触れておきたいと思います。それは、あらゆる芸術にとってきわめて重要な原理は、自己表現であるという考えです。私は自己表現が芸術学習の始まりだとも、いかなる芸術の最終目標であるとも思いません。(中略)しかし不思議なことに、そのような落書きを自己表現 − それゆえ芸術として受け入れてしまう人は少なくないのです。

『デザインについて バウハウスから生まれたものづくり』アニ・アルバース

古代ギリシアの水がめは、現代で使うには向かないけれども、いまだに私たちに崇敬の念を抱かせてくれます。今度はバケツはどうでしょう。現代においてはだいたい同じような用途を果たすものです。古代の器に比べたらはるかに機能的ではあるけれど、小恥ずかしくて赤面しそうになりませんか。なぜなら、遠い将来、私たちの文化水準がバケツ並みだと判断されそうだからです。

*テキスタイルアーティストのアニ・アルバースの言葉は工芸品と大量生産品についての所感というニュアンス。

 

Books | Left to Right:『配色の設計』ジョセフ・アルバース 永原康史監訳、『ブラック マウンテン カレッジへ行って、考えた』永原康史、『デザインについて バウハウスから生まれたものづくり』アニ・アルバース 日髙杏子訳、『美の構成学 バウハウスからフラクタルまで』三井秀樹、『BAUHAUS HUNDRED 1919 – 2019』伊藤俊治