Collection: Art exhibition catalogue ♯2

『版と型の日本美術』
町田市立国際版画美術館 1997
“Impressions in Japanese Art”
Machida City Museum of Graphic Arts 1997

図録コレクションから第二弾

紙を発明したのは中国だった。原料にセイタンという植物の樹皮を用いた手漉紙を宣紙という。手漉きの技術が日本に伝わり、原料に雁皮や楮(こうぞ)を用いて和紙が生まれた。「もともと日本には文字すらなかった」。昨年、デザイナーで多摩美術大学元教授の永原康史先生は蔵前のiwao galleryでそう仰られた。先生のご著書『日本語のデザイン 文字からみる視覚文化史 (*)』では「紙のデザイン」の章で中国由来の装飾紙、唐紙(からかみ)が取り上げられている。町田市立国際版画美術館の図録『版と型の日本美術』にも「料紙装飾」の章で唐紙に関する学術的解説がある。二冊を併読すると、貝殻の粉や顔料を混ぜ合わせて色をつけ、さらに文様が摺られた唐紙はそれ自体が美しいけれど、その装飾を活かすように余白をたっぷり設けて書かれる女文字(平仮名)の美しいこと。平安時代、貴族の嗜みは紙とタイポグラフィがセットなのだ。図録は京都便利堂の制作。章立ては、型押(仏像)、型染(着物の文様)、料紙装飾(唐紙)、仏教版画、模写、出版(経典)、そして版画(浮世絵)。2006年に女子美術大学で見た『KIMONO 小袖にみる華・デザインの世界』展とも重なる。充実の内容にも関わらず、美術館では今や¥1,400という格安プライスタグがついている。図録の在庫数は数冊とのこと。

*私の所有する本は永原教授のサイン入りiwao galleryエディション。先生と磯辺さんに感謝します。
*女文字や女手と呼ばれた平仮名が公用で使われたのは紫式部の源氏物語以降、それ以前は漢字のみ。

 

Left: 昨年の展示では宣紙にジークレープリントされていた中国出身ロンドン拠点のビジュアルアーティストFeiyi Wenさんの作品
Right: 『日本語のデザイン 文字からみる視覚文化史』永原康史
他の参考文献: 『日本史を支えてきた和紙の話』朽見行雄、『和本への招待 日本人と書物の歴史』橋口侯之介