Collection: Art exhibition catalogue ♯1

まえおき: 自分にとっての教科書として、美術展鑑賞の際に時々購入する展覧会図録をいくつかここにアーカイブしておく試み。自分の言葉で言語化するのは難しいけれど。

『版画 × 写真 1839 – 1900』
町田市立国際版画美術館 2022
“Prints x Photographs 1839 – 1900”
Machida City Museum of Graphic Arts 2022

それは描かれたものなので版画に見える(写真上)。西洋画家の間で流行したらしいクリシェ=ヴェールという技法は、ネガとなるガラス板に乳剤を塗って、それを掻き落としながら絵を描き、ガラス板の下に印画紙を置いて日光で焼きつけるものらしい。インクを使わない、版画の世界のオルタナティブ・プロセスかもしれないし、薬品や印画紙や露光は写真技法。
1800年代、カロタイプを考案して、世界で初めて写真集を作ったのはクリシェ=ヴェールの発明者でもあったイギリスの物理学者ウィリアム・ヘンリー・フォックス・トルボットだった。2022年に町田市立国際版画美術館で開かれた『版画 × 写真 1839 – 1900』展の図録には、版画と写真の関係性が多くは平易な短文と図版で纏められている。手触りが良いこの本には表紙を含めて三種類のマット調の用紙が使われている。掲載内容は、トルボット(図録表記はタルボット)やナダールなど歴史上の人物と作品、カメラ・オブスクラ、ダゲレオタイプ、ネガ・ポジ法や鶏卵紙、カロタイプ、バクステロタイプ、ピクトリアリズムなどの技法や動向、風景: 記録と芸術、報道: 主観と客観、芸術と商業の論争。印刷はニューカラー写真印刷。

 

世界最初の写真集、トルボットの『自然の鉛筆』日本語版 赤々舎
The Pencil of Nature / William Henry Fox Talbot (AKAAKA, 2016)

トルボットが用いた「フォトジェニック」という言葉は、見栄えの良い綺麗な写真という意味ではなく、光で絵を描く写真技法のこと。畠山直哉氏の著書『話す写真』に解説があった気がする。2010年のポートフォリオ・レビューでレビュワーを務められた編集長もこう仰られていた。「写真は写真にした時点で、どれもフォトジェニックなんですよ」